シリコンバレー式・起業法 "リーン・スタートアップ" とは?
あなたは、
リーン・スタートアップ
という新規事業を成功させる手法をご存知でしょうか。
この手法は、スタートアップの聖地であるシリコンバレーの有名起業家「エリック・リース」によって発案された手法です。
はじめにリーン・スタートアップ簡単にまとめてしまうと、
1.最小限のプロダクトをつくり、需要があるかの検証をする
2.検証結果のデータをもとに、プロダクトを改善する
3.そのサイクルを高速で回すことによって最終的に最高のプロダクトをつくる
という手順によって事業を成功させようとするものです。
リーン手法の発案者エリック・リースは、IMVU(かつてアメリカで流行したSNS)をCTOとして成功させた人物です。
そんなリース氏が書いた本
に、その手法の全てが書かれています。
この手法は、恐らくシリコンバレーで知らない人はいないでしょう。
シリコンバレーの起業家は皆、この手法を知っており、
あのY Cominator(世界最大級のVC/アクセラレータ)も投資先や起業志望者にこれを推奨しています。
新規事業の立ち上げ方法で、これほどシンプルで筋の通った手法は他に無いのではないでしょうか。
この記事を読んでいただければ、
リーン・スタートアップとは何か、が理解でき、
実際にこの手法を導入できるように書きました。何か説明不十分な点があればコメント欄にてお伝え下さい。
- スタートアップとは
- Lean Startup Japan代表の言葉
- リーン・スタートアップの5つの大原則
- 1.アントレプレナーはどこにでもいる
- 2.起業とは経営である
- 3.検証による学び~仮説を検証しよう~
- 4.構築→計測→学びのサイクルを回せ
- 5.革新会計~イノベーションを計算しろ?~
- おわりに
スタートアップとは
そもそもスタートアップとは何でしょうか。
リーン手法はスタートアップを成功させるための手法ですが、
スタートアップは、勘違いされがちな概念です。実際、人によって定義がバラバラです。
個人的な感覚ですが、
スタートアップは、大体以下の2つの意味で言われます。
1.急成長を志向し、世界を変えることを志向し事業を行う企業
2.出来たばかりの企業
この本では、1.の意味合いがとても強いです。
リース氏は本の中でスタートアップを以下のように定義しています。
スタートアップとは、とてつもなく不確実な状態で
新しい製品やサービスを創り出さなければならない人的組織である。
「企業」と限定していないため、政府やNPOもスタートアップで有り得るとし、7000人の大企業スタートアップも可能だとしています。
実際、彼がコンサルした中で政府のプロジェクトもあればNPOもあり、7000人の大企業でも新規事業を成功させたそうです。
Lean Startup Japan代表の言葉
ここで、リーン・スタートアップの概要を理解できるようLean Startup Japan代表の和波氏の言葉をお借りします。
リーン・スタートアップについて、
新規事業というのは不確実性との戦いで、そこで生まれたアイデアは仮説にすぎない。
従って、速攻で行動に移して学んでいかなければならない。計画を立てている場合じゃなく、MVPからはじめなければいけない。
そこで立てる仮説は、事業アイデアのみではなく戦略もつくらなければいけない。さらに、それを成長戦略とマイルストーンによって常に正確に測定していく。その結果として、事業案を意図的に方向転換する。そしてこのサイクルを回せる組織は、トヨタ生産方式を実践できる柔軟性の高い組織だということだ。
これこそが「リーン・スタートアップ」の考えだ。
リーン・スタートアップの5つの大原則
それでは、リーン・スタートアップという手法を具体的に解説していきます。
リース氏は、リーン・スタートアップには、5つの大原則があるとしています。
- アントレプレナーはどこにでもいる
- 起業とは、経営である
- 検証による学び
- 構築→計測→学びサイクル
- 革新会計
実際、彼の本の中には、この5原則以外についてはほぼ全く書かれていません。
そのため、この記事では、この5つの大原則についてそれぞれ解説することで、
リーン・スタートアップ手法を理解して欲しいです。
また、特に3.4.5.が重要なポイントとなるため、1.2.については飛ばしてもらっても構いません。
1.アントレプレナーはどこにでもいる
リース氏は、アントレプレナーを、日本語で言う単なる「起業家」ではなく、「事業家」のように捉えています。
必ずしも社長ではありません。
スタートアップ企業においては、経営陣みながアントレプレナーだとしていて、
大企業においても、スタートアップを起こそうと志向している人はアントレプレナーだとしています。
2.起業とは経営である
起業に対する見方で、何か新しいものを作り上げるワクワクした部分のみを見てしまいがちですが、リース氏は、起業とは経営(マネジメント)であると強調している。
組織をマネジメントすることが最も大切なことだ、と。
では、どのような組織を作ったら良いのか。それは、以下3.4.5.で紹介するような手法で事業を作っていく組織です。
3.検証による学び~仮説を検証しよう~
以下は、リース氏の言葉です。
スタートアップとは、壮大な実験である。
スタートアップとは、仮説を検証し続けることである。
スタートアップとは仮説の検証である、というのは非常に面白い言葉です。
仮説の検証が最も大切だということです。
そもそもスタートアップの新規事業というのは非常に不確かな状況で戦う必要がります。
理由は、
- 変化の速い時代だから
- スタートアップだから(存在しない新しい価値を生み出し、急成長をしなければならない)
という2つが大きいかと思われます。
このように不確かな状況で必要なのは、
確かなものを見出すことです。
スタートアップにおいて最も重要でありながら、
残念ながら失敗の原因になってしまいがちな事があります。
それは、「顧客が欲しがらないものを作ってしまう」ことです。
スタートアップを含む新規事業の多くはこれが原因で失敗します。
問題なのは、「顧客が欲しがるだろう」というただの仮説を仮説のまま信じてしまい、
結局自分たちが欲しいものを作ってしまうことです。
仮説は、検証されなければならない。
検証しなければならない仮説のうち、
最も重要なものは2つです。 以下の2つが検証出来れば、まず第一関門クリアです。
1.価値仮説
2.成長仮説
1.価値仮説
価値仮説とは、このプロダクトは顧客にとって価値があるだろう、という仮説です。
先程も言いましたが、仮説のまま最後まで作り上げてはいけません。
顧客が喜ぶ(=価値がある)ものを作らなければならないのですから。それをチェックしなければなりません。
2.成長仮説
成長仮説とは、これなら継続的に成長が約束されるだろう、という仮説です。
このままであれば、〇〇という方法で成長させていける!と思えることが重要です。それを検証して証明できれば、投資家などから見ても、「今はだめでも、これは上手くいく」と思えるわけです。
4.構築→計測→学びのサイクルを回せ
1.最小限のプロダクト(MVP)を作ったら<構築する>、
2.顧客の反応データをみて<計測する>、
3.ニーズおよび改善点を学んで<学ぶ>、
4.その学びを活かしてプロダクトを改善する<構築する>
そしてまた、、、、、
というサイクルを回していきます。
また、この概念が分かりづらければ、以下のように言葉を直すと分かりやすいかもしれません。
構築→計測→学ぶ
↓
仮説→検証→改善
例えば、
「この機能でユーザーは喜ぶのではないか」(仮説)
↓
「滞在時間が伸びた!」(検証)
↓
「導入」(改善)
といったサイクルです。
最小限の機能で、そもそもユーザーは集まるのか?
結論から言うと、集まります。
アーリーアダプター(初期採用者)の存在を忘れてはいけません。
人々全体の10%ほどと言われている層のことです。新し物好きで、何か新しいサービスや製品が出たらすぐに試したくなる人々です。
例えば、最初のiPhoneはヒドイ品質だった。重いし、ネットが遅すぎて使い物にならない。でもアーリーアダプター達がこぞって使い、レビューをし、広まっていったのです。
どんな製品も、最初はそんなに良いものではありません。
それでも新しい魅力を感じて、使ってくれる層がいます。
(とはいえ全体の10%程度です。最終的には皆に愛されるプロダクトであるべき。)
5.革新会計~イノベーションを計算しろ?~
イノベーションを起こすには、プロダクトを顧客ニーズに合わせて急成長させて行く必要があります。
その、イノベーションを計算によって起こす方法があります。
プロダクトの成長速度を左右する3つ
基本的にプロダクトの成長速度は以下の3つによって決まる。
1. 1ユーザーあたりの利益率
2. 新規ユーザー獲得コスト
3. 既存ユーザーのリピート率
こういった指標をきれいにまとめられる手法があります。
コホート分析でイノベーションを計算せよ
成長速度を計算できるのが、コホート分析です。
↑こんなものです。
ユーザーが、どんなアクションをしてくれたか、というデータを整理します。
具体的にどうやって分析していけば良いかというと、
例えば、
『無料登録は多いけど、有料登録(980円)にはゼロだ』
(つまり1ユーザーあたりの利益率がゼロ)
というのが分かったとします。
その場合は、有料登録をしてくれない原因を検証すべきです。
ここで↓のような仮説を立てます。
『有料会員のメリットの説明が不十分なのでは?』
という仮説を立てれば、十分な説明を表示して、またユーザーに使わせてみます。数字が改善するかもしれません。
このように分析をして、改善をしていくのです。
※Webサイトにこの分析を使うのであれば、Googleアナリティクスの機能に「コホート分析」があるので、以下の記事を参考に行ってみくのをおすすめします。
Googleアナリティクスのコホート分析を使って分析してみました。│株式会社イー・エージェンシー
おわりに
要するにリーン・スタートアップは、
仮説→検証→改善
というシンプルなサイクルを繰り返せば良いプロダクトができる、ということです。
言い換えれば、完璧なプロダクトを作ってからレビューされて、「当たりだ」・「ハズレだった」と言うのは止めましょう、ということでもあります。 いわゆるウォーターフォール型の思考でのスタートアップは止めましょう、と。
「こうすれば顧客は喜ぶんじゃないか?」という仮説を検証し、それによって得られたデータから、プロダクトを改善する。
この記事が少しでも新規事業を起こそうとしている方に役立てば嬉しいです。
この記事で触れられた部分は要点をかいつまんでいるだけで、十分ではありません。
本当にリーン手法でやって行こうと思うなら
↓以下の原本を読むのをオススメします。
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リーン手法は大流行したので、関連本も多く出版されています。
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